私のお腹の前で泣かないでください。

あれは確か20年前の冬のことでした。一度もサンタさんにあったこともない、トナカイも飼ったことのない子供がいました。彼の実家は山梨にあるといい、そこには優しいおかあさんと、恐ろしいおばあさん、器用なおじいさんと、不屈の精神をもつおとうさんが仲良く暮らしていると言いました。

私が彼に「君は一人できたの?」と聞きました。ああ、そうでした。私達はそのとき、東京のJR渋谷駅の西口の横断報道の前にいました。すると彼は「違うよ。お父さんがサンタさんに合わせてくれるって言ったんだ。」と言いました。

「おとうさんはどこ?」私が尋ねると彼は「今はワイハー。」と答えました。彼の父は、自分の息子を渋谷に置き去りにして、ハワイに旅行をしていたのでした。

「おみやげをかってきてくれるんだ。お父さん、くるんだ。」と、彼が楽しそうに言うので、私はそれが不憫で仕方ありませんでした。冷酷に彼を見捨てた私は、栃木にある家に戻ると、妻にさきほどの話をしました。

すると妻が、私にむかって言いました。

「じゃあおみやげはどこなの?」

私は知りません。こうして妻は私のお腹の前で、泣きじゃくってしまったのです。

 

 

短いですが、はじめて物語を書いてみました。頑張ったのですが、いかがですか?